申請前の準備が多く、海外から呼ぶか国内在住者かで申請の種類が変わる
特定技能外国人(1号)の採用は、大きく「受入れの可否の確認 → 人材の確保 → 雇用契約 → 申請前の準備 → 在留資格の申請 → 就労開始後の支援・届出」という流れで進みます。
押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 申請の種類が2つある:海外から呼ぶ場合は「在留資格認定証明書交付申請」、日本国内に在留している人(留学生や技能実習修了者など)を採用する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。
- 申請前にやることが多い:雇用契約の締結に加えて、事前ガイダンス、健康診断、支援計画の作成、分野別協議会への加入、市区町村への協力確認書の提出(初めて受け入れる場合)を、申請の前に済ませる必要があります。
- 審査にも期間がかかる:出入国在留管理庁が示す標準処理期間は、在留資格認定証明書交付申請が1か月から3か月、在留資格変更許可申請が1か月から2か月です(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q24)。
採用フローの全体像
出入国在留管理庁の「外国人労働者に関する制度概要」(令和8年9月29日更新)の「就労開始までの流れ」をもとに、企業が行うことを整理すると次のとおりです。
| ステップ | 内容 | 海外から呼ぶ場合 | 国内在住者を採用する場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受入れの可否を確認する | 共通 | 共通 |
| 2 | 人材を探す(募集・選考) | 試験合格者・技能実習2号修了者など | 留学生・技能実習2号修了者など |
| 3 | 特定技能雇用契約を結ぶ | 共通 | 共通 |
| 4 | 事前ガイダンス・健康診断 | 共通 | 共通 |
| 5 | 支援計画を作成する | 共通 | 共通 |
| 6 | 協議会への加入・協力確認書の提出 | 共通 | 共通 |
| 7 | 在留資格の申請 | 在留資格認定証明書交付申請 → 査証申請 → 入国 | 在留資格変更許可申請 → 在留カードの交付 |
| 8 | 就労開始後の支援・届出 | 共通 | 共通 |
各ステップでやること
ステップ1:受入れの可否を確認する
最初に、採用したい業務が特定技能の対象かどうかを確認します。2026年10月時点で、1号の対象は19分野です。ただし、2026年1月に追加された物流倉庫と資源循環は、準備が整い次第、受入れが始まる予定の段階です(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
分野によっては、受入れが止まっていることもあります。外食業分野では、2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付の一時停止措置がとられています。4月13日以降に受理された在留資格認定証明書交付申請は原則として不交付、他の在留資格からの変更申請も原則として不許可です。一方で、外食業分野の1号として在留している人の転職に伴う変更申請などは、通常どおり審査されています(出典:出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」2026年10月19日掲載)。
あわせて、自社が受入れ機関の基準を満たしているかも確認します。主な基準は次の4つです(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること(例:報酬額が日本人と同等以上)
- 機関自体が適切であること(例:5年以内に出入国・労働法令の違反がない)
- 外国人を支援する体制があること(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
- 外国人を支援する計画が適切であること
ステップ2:人材を探す(募集・選考)
1号で働くには、原則として分野ごとの技能試験と日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上など)に合格している必要があります。技能実習2号を良好に修了した人は、試験が免除されます(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
人材を探す方法は、求人に直接応募してもらうほか、ハローワーク(国内在住者の場合)や民間の職業紹介事業者を通じる方法があります。採用する人が、次の本人要件を満たしているかも確認します。
- 18歳以上であること
- 技能試験と日本語試験に合格していること(技能実習2号を良好に修了した人は免除)
- 1号として、原則として通算5年以上在留していないこと
- 保証金を徴収されていないこと、違約金を定める契約を結んでいないこと
- 自分が負担する費用がある場合は、その内容を十分に理解していること
技能実習生を採用する場合は、時期に注意が必要です。技能実習計画が終わっていない実習中の人は、特定技能に変更できません。技能実習2号の実習中に申請することはできますが、修了後は、特定技能への変更が許可されるまで働くことはできません(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q47・Q49)。
海外から採用する場合は、国籍国との「二国間取決め」も確認します。日本は、令和7年12月1日時点で、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンの17か国と取決めを作成しています。取決めのない国の人も受け入れることはできます(出典:同Q&A Q98・Q100)。
取決めのある国では、本国での許可などの手続き(送出手続)が国ごとに定められており、国によっては、送出手続を済ませたことを示す書類を在留資格の申請時に提出する必要があります(出典:出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」)。
ステップ3:特定技能雇用契約を結ぶ
採用が決まったら、特定技能雇用契約を結びます。雇用契約は適切な内容である必要があり、たとえば報酬額は日本人と同等以上であることが求められます。また、特定技能では、労働者派遣による受入れは農業分野と漁業分野に限られています(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
ステップ4:事前ガイダンスと健康診断
雇用契約を結んだら、申請の前に「事前ガイダンス」を行います。事前ガイダンスでは、労働条件、活動の内容、入国の手続き、保証金の徴収の有無などを、対面やテレビ電話などで説明します。保証金の徴収や違約金を定める契約が違法であることも伝える必要があります。事前ガイダンスは、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の前に実施します(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」、「特定技能制度に関するQ&A」Q85・Q86)。
あわせて、本人に健康診断を受けてもらいます(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
ステップ5:支援計画を作成する
1号の外国人を受け入れる企業は、「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、在留資格の申請のときに、ほかの申請書類と一緒に提出します。支援計画には、省令で定められた次の10項目の支援の内容や方法、支援責任者と支援担当者などを記載します(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居の確保・生活に必要な契約の支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流の促進
- 転職の支援(受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
支援計画の実施は、全部または一部を外部に委託できます。全部を登録支援機関に委託した場合は、「外国人を支援する体制がある」という基準を満たすものとみなされます。なお、1号の支援体制に係る要件は、2027年4月1日施行の改正が公表されています(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度」ページ)。
ステップ6:協議会への加入と協力確認書の提出
受入れ企業は、分野ごとに設けられた協議会への加入が義務付けられており、在留資格の申請の前に必ず構成員になる必要があります(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q14)。建設分野と工業製品製造業分野では、分野所管省庁の登録を受けた法人(登録法人)に加入する必要があります(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。加入の手続きは分野ごとに異なるため、各協議会のホームページや分野所管省庁で確認します。
また、初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、雇用契約を結んだ後、在留資格の申請の前に、外国人が働く事業所の所在地と住居地の市区町村に「協力確認書」を提出します。協力確認書は、地方公共団体から共生施策への協力を求められた場合に、必要な協力をすることを示す文書です(出典:同上)。
ステップ7:在留資格を申請する
ここまでの準備ができたら、地方出入国在留管理局に在留資格の申請をします。
海外から呼ぶ場合
- 受入れ企業の職員などが代理で「在留資格認定証明書交付申請」を行う
- 交付された在留資格認定証明書を本人に送る
- 本人が、在外公館(日本大使館・領事館)で査証(ビザ)を申請する
- 査証の発給を受けて入国し、在留カードの交付を受ける(後日交付の場合あり)
国内在住者を採用する場合
- 本人が「在留資格変更許可申請」を行う(本人申請が原則)
- 許可されると、新しい在留カードが交付される
(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)
在留資格認定証明書交付申請に手数料はかかりませんが、在留資格変更許可申請には手数料が必要です。また、申請は郵送では受け付けられていません(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q22・Q23)。
ステップ8:就労開始後にやること
入国後(または在留資格の変更後)は、遅滞なく、生活オリエンテーションの実施、住居地の市区町村での住民登録、給与口座の開設、住宅の確保などを行います(出典:出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」)。
その後も、支援計画に基づく支援を続けます。たとえば、支援責任者などが、外国人本人とその上司などと3か月に1回以上の定期的な面談を行う必要があります。
出入国在留管理庁への届出も必要です。雇用契約や支援計画の変更・終了などがあったときの「随時届出」に加えて、毎年4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援の状況を、翌年4月1日から5月31日までに「定期届出」として提出します。支援計画の全部を登録支援機関に委託している場合は、受入れ企業と登録支援機関の連名で届け出ます(出典:同上)。
採用をスムーズに進めるためのポイント
申請前の準備から逆算してスケジュールを組む
在留資格の審査には、標準で1か月から3か月(在留資格認定証明書交付申請の場合)かかります。これに加えて、雇用契約、事前ガイダンス、健康診断、支援計画の作成、協議会への加入、協力確認書の提出を、すべて申請前に済ませる必要があります。海外から呼ぶ場合は、さらに本人の査証申請や渡航の準備も必要です。
協議会への加入手続きは分野ごとに異なり、時間がかかる場合もあるため、採用活動と並行して早めに進めておくと安心です。
保証金・違約金がないかを必ず確認する
外国人本人が保証金を徴収されていたり、違約金を定める契約を結んでいたりすると、特定技能の要件を満たしません。二国間取決めは、こうした悪質な仲介事業者を排除するための情報共有の枠組みとして作られています(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q99)。海外の機関を通じて採用する場合は、本人がどのような費用を負担しているかを事前ガイダンスなどで確認しておきましょう。
支援を自社で行うか、委託するかを早めに決める
支援計画は申請時に提出するため、支援を自社で行うか、登録支援機関に委託するかは、申請の前に決めておく必要があります。自社で行う場合は、外国人が理解できる言語で支援できる体制などの基準を満たす必要があります。
よくある質問
申請してから許可までどれくらいかかりますか?
出入国在留管理庁が示す標準処理期間は、在留資格認定証明書交付申請が1か月から3か月、在留資格変更許可申請が1か月から2か月です(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」Q24)。実際には、これに申請前の準備期間や、海外から呼ぶ場合の査証申請・渡航の期間が加わります。
協議会にはいつ加入すればよいですか?
在留資格の申請の前に加入している必要があります(出典:同Q&A Q14)。手続きは分野ごとに異なるため、各分野の協議会のホームページで確認してください。
二国間取決めのない国の人も採用できますか?
採用できます。国籍国が二国間取決めを作成していることは、受入れの要件ではありません(出典:同Q&A Q100)。
技能実習中の人を、修了後に特定技能で採用できますか?
技能実習2号の実習中に特定技能への変更を申請することはできますが、修了後は、変更が許可されるまで働くことはできません。技能実習2号を良好に修了し、業務との関連性が認められれば、技能試験と日本語試験は免除されます(出典:同Q&A Q49・Q50)。
外食業分野では、今は採用できませんか?
2026年10月19日時点では、海外から呼ぶための在留資格認定証明書は、4月13日以降に受理された申請について原則として交付されていません。一方、外食業分野の1号として在留している人の転職に伴う変更申請などは、通常どおり審査されています(出典:出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の在留諸申請の審査状況」)。
まとめ
特定技能外国人の採用は、受入れの可否の確認から始まり、雇用契約、事前ガイダンス、健康診断、支援計画、協議会への加入、協力確認書の提出という申請前の準備を経て、在留資格の申請へと進みます。海外から呼ぶか、国内在住者を採用するかで申請の種類が変わる点と、審査に標準で1か月から3か月かかる点を踏まえて、余裕をもったスケジュールを組むことが大切です。
分野ごとの手続きや受入れ状況は変わることがあるため、採用を始める前に、出入国在留管理庁と分野所管省庁の最新情報をあわせて確認してください。
